晋作に呼び出されてきたのだが、さっきから黙ったままで時間だけが流れていた。




――――――――雨が降っている。




「ねぇ、桂さん」

やっと口を開いた晋作は視線を外したまま、呟くように言った。



雨空に晋作は何故か似合いすぎて、俺は何を恐れているのか分からないが兎に角、怖い。

此の侭、何処かへ消えて行く様で。



「もし、もしもの話だけど、俺が死んだら……泣いてくれる?」

「何を言っているんだ?悪ふざけなら体外にしないか」



怒ってしまった。
自分でも少し顔が歪むのが分かった。

晋作、何故そんなことを聞くのだ。



「答えて」



格子窓に寄りかかって俺の方を向く。

いつも俺と居る時だけ見せてくれる柔らかい笑みはそこに無かった。
代わりに今にも涙が零れるような悲しい顔。




――――――――雨の音が少し煩い。




「あたりまえだろ?」



思ったよりも未だ怒ったままの声で、自分の声なのに驚いた。
その声を聞いてか、晋作は黙ったまま俯いてしまった。



「ありがとう、桂さん」



声が掠れている。

俺の見間違いか、晋作の瞳から雫が零れた。


ああ、待ってくれ、消えないでくれ。

咄嗟に、そんな思いに駆られて強く抱きしめた。



「桂さん?」



苦しそうに顔を上げて俺の俺を向く。
すぐ近くにいるからよく分かる。
やっぱり泣いていたんだね。



「苦しいよ?」




――――――――雨の音だけが響いて。




「消えないでくれ」



勝手に言葉が口から溢れる。



「死ぬなんて易々と言うもんじゃない!」



分かっているつもりだ。
こんな御時世、特に俺達はいつ死んでもおかしくないことくらい。
だが、俺はお前が俺の目の前から居なくなるなんて考えられないことなんだ、と。



「ごめん、なさい………でも…」
「分かってくれれば良いんだ」

泣くな、そう囁いて唇を奪おうとしたその時だった。




ドン




初めて拒まれた。
晋作の細腕では想像も付かない様な力で。



「でもね、桂さん……俺…」



まさかと思った刹那。



「労咳、みたいなんだ………」







――――――――雨が、強くなった。










後書き→岡野様に献上しようと思っていた初・歴史物桂高です!
初めっから微妙に病ネタが混じっていて…orz
そんなこんなで密かにここにUPしてみました。
もし岡野様がここを見てたら、岡野様のみお持ち帰り可で。
(まずこれは無いな、うん)(自己完結)









パソコンにしばらく触っていなかったせいで発見が遅れた岡野です。このグズっばかっ!!
なんだこれ・・萌え・・・
どうしよう、身に余る素敵な物を貰って一生分の運を使い切った気持ちです。一生返しきれない借金を負った気持ちです。
セリさんどうも有難うございました!!
セリさまの素敵サイトはブクマの「黒揚羽」から